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第2回西日本統括本部研修会

第2回西日本統括本部研修会

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                        平成28年10月31日
                           木下 省子

        第二回 日本心理職協会(西日本統括本部)研修会
  「こころの声に寄り添って~関西いのちの電話の現場から~」 参加報告

 関西いのちの電話は43年の歴史があります。340名のボランティア相談員により、年間2万4千件を受信しています。毎日、途切れることなく電話があり、受話器を置くとすぐに次の対応へ移るのが現状です。第一声が「やっとつながった!」という相談者も多くいらっしゃいます。受信できなかった件数もあわせると、10倍の24万件ほどのアクセスがあると予測しています。
大阪の十三にある関西いのちの電話は、①24時間・365日いつでも②匿名(名前を言わなくてもいい)③ボランティアによる電話対応の3つを基本姿勢として、43年間貫いています。この体制を実現すべく、全相談員は、月2回の電話相談と年2回以上の深夜担当が義務付けられています。大阪のおっちゃん、おばちゃんが研修を受けて相談員になるのですが、研修内容は非常に厳しく、2年間にわたり、理論とロールプレイ、スーパービジョンを受け、名前や年齢など質問せず、ただひたすら傾聴することを学びます。中には、相談内容の重さが負担になったり、長年の勤務経験でどうしても指導口調になってしまうなど、途中でリタイアする方もおられ、晴れて相談員になれるのは半数に減ってしまいます。しかし、この厳しい研修を乗り越えたからこそ、顔が見えず、情報がない状態でも、電話の向こうの相談者に寄り添える強さ、たくましさを勝ち得るのだと思います。相談員になった後も、定期的に研修は続き、ケーススタディなど情報交換をしながら、相談員の質を向上させています。相談員は守秘義務があるので、家族にも相談内容は話せません。それゆえ、相談員同士の支え合いが重要になると感じました。大変だったケース、戸惑ったケースなどについて、お互い励まし合い、アドバイスをすることで、相談員自身が「この場だから何でも話せる、受け止めてもらえる」と感じます。安心できる場所にいるからしっかり寄り添えるのです。相談員から相談員へ、相談員から相談者へ思いやりの気持ちをつなげていく、そのようなネットワークによって成り立っていると感じました。
相談員は、データ管理も担当しています。年間受信する2万4千の案件は、担当した相談員が知りえた情報やおおよその年齢、性別など受信カードに記入され、全てデータ化されます。1件1件処理していると、相談内容が異なっていても同一人物であると判別できるそうで、頻回通話の割合も公表しています(2015年度は全体の56%が頻回通話)。また、最も多い相談内容は、「心の病で仕事につけない」など精神の病についてです。電話対応だけではなく、データを管理し数値化して公表するまでボランティアの力によるものです。このすばらしい組織力には驚かされました。同時に、報酬がない状況で、組織の一員として電話相談から運営までを担うモチベーションはどこからやってくるのか?と疑問に思いました。
この疑問の答えは非常に印象的なものでした。電話相談をしていて、10件に1件くらいの割合ですばらしい出会いがあるそうです。「今日この方は、私と出会って救われた!」と確信できる瞬間があり、この瞬間は本当にこの仕事をしていてよかったと思えます、と話しておられました。ただし、電話を切った後で、相談者の悩みが全て解決して明日から元気に生活できる、という意味ではありません。その瞬間に、「私はがんばってきたよね」と相談者の自己肯定感を促し、前を向く勇気、自分自身でよくなろうとする力を引き出すお手伝いができた、ということです。精神科医や心理カウンセラーによるアプローチとは異なり、そもそも個人カルテは存在しませんので、電話でつながっている時間限定のサポートです。完全治癒を目指すのではなく、つらいその瞬間に寄り添う、人生において一瞬の通過点に過ぎないかもしれませんが、まさに一期一会の出会いなのです。
関西いのちの電話事務局に一本の電話があったそうです。50代の女性からで、「中学生の頃、親から虐待を受け非常に苦しかった時に、何度かお電話しました。その時、相談員の方に自分を受け止めてもらい、しっかりとお話を聞いてもらったおかげで、今日まで命が続いたと思っています。40年が過ぎ落ち着きました。やっとお礼が言えます。」という内容でした。そのとき、よかった、というよりは身の引き締まる思いがしました、というお言葉は、非常に印象に残っています。電話相談は点ではなく、お一人お一人の人生に線でつながっていたのだなと感銘を受けました。

~みんなで守ろうかけがえのない「いのち」~ これはJR西日本と近畿二府四県のいのちの電話センターが共同で制作したポスターのキャッチフレーズです。鉄道に飛び込む前に救える命は救いたい、という双方の想いが一致し実現しました。今や全国50か所で運営されているいのちの電話は、イギリス ロンドンのチャド・バラー牧師が、教会に通う少女の自死をきっかけに「あなたのいのちを絶つ前に、私に電話してください」というメッセージをロンドン・タイムズに掲載したことから始まりました。世の中には、つらい気持ちを一人で抱え込んだ方が大勢いらっしゃいます。関西いのちの電話ボランティア相談員による活動は、そのような方々がまた元気に一歩を踏み出せるよう、大きな力となっています。完全治癒ではなく、その瞬間寄り添う、というスタイルは、私たちの日常生活の中でも実現可能なサポートではないでしょうか。専門機関にお任せするだけではなく、いのちを救う力は私たちにもあるのです。心理職協会には様々な職種の方がいらっしゃいます。今回の研修は、学校で、医療機関で、オフィスで、家庭で、どのように行動すれば身近にいる方々が自ら元気になろうとする力を引き出せるのか、改めて考えるよいきっかけになったと思います。今後も、研修を通して、新しい視点、発想を学び、一人でも多くの方が元気に幸せに暮らせるように考えていきたいと思います。貴重な経験をありがとうございました。

本研修は、地方会員の研修の機会を確保していくために、神戸につづき大阪市のエル大阪で開催されたものです。講師は、ご自身も相談員としてのキャリアを積まれた、関西いのちの電話事務局長 田尻悦子先生でした。
次回は、来春京都で開催することが決まっています。数多くの会員の皆様がご参加してくださることを心より願っています。

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